住まいづくりcolumn
多世代での暮らしに寄り添う建築家がつくるマイホーム
4世代がひとつ屋根の下で同居するという暮らし方
近年、共働き世帯や少子高齢化による高齢者の単身世帯が増加し、日本社会においては今後もますます核家族化は進むとみられている。ツジデザイン一級建築設計事務所の辻さんは、そうした社会問題は住宅設計においても避けて通れない今後の課題であると考えており、実際5年前にご自身の家を建てる際、ご高齢の曾祖母からお子さんまでの4世代がひとつ屋根の下に集まるという暮らし方を選択することにしたという。
建築地は接道する北側以外の三方向を囲まれた奥行きのある細長い形状だったため、当初から建物内部への採光に懸念があった。そこで建物の中心に中庭を設け、そこから光を取り込むことでその問題を解決。同時に中庭へは敷地東側の長いアプローチからアクセス、その中庭を建物への出入口とすることで家族のプライバシーもしっかりと守れるようにしている。そしてもう一つ、多世代家族ならではの大きな問題というのが、世代間での生活リズムや価値観の相違。しかし、そこも親世帯と子世帯の生活ゾーンの間に中庭を挟みつつ、親世帯を南側、子世帯を北側とすることで、縦方向と横方向にズレのある快適さを感じる絶妙な距離感を設計。
こうして完成から5年、辻さんご一家の快適な暮らしは現在も続いているが、実際に住んでみて改めてその重要さに気づかされたのが「断熱性能」だという。以前のお住まいは朝の室内気温が3℃程度まで下がっていたが、今のお宅は15℃程度で常に安定しており、冬場や夏場には快適さにおける大きな違いを実感しているという。
Post:2024.08.01