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住まいづくりcolumn

「窪み」で内と外が繋がる、 閉じつつも開けた家

見通しの良い開けた土地に計画した、明るく開放的な家づくり

 比較的交通量の多い幹線道路に面する、見通しの良い開けた土地に建つD邸。しかし、見通しがよく気持ちの良い立地であるがゆえ、住宅建築を考える際には、周囲からの視線への配慮が不可欠でもあった。D様も計画当初からその点を心配しており、「周囲からの視線を気にせず落ち着いて暮らせる、明るく開放的な住環境」をテーマに設計は始まったという。
 設計の最大のポイントは、周囲からの視線を遮る閉じた空間と、外部に開いた明るく開放的な空間の両立。設計を担当したスレッドデザインスタジオの伊藤さんは、この相反する要素に対する解決策として、建物に「窪み」をつくることで外部からの光を採り込みつつ視線をかわすことを提案した。

 

 外部からの視線を遮るために周囲を囲い込んでしまうと、その一方で室内の明るさや開放感を確保することが難しくなってしまう。その難題を解決する「窪み」とは、例えば家の中央に設置した南に面するタイルテラス。空から差し込む光を採り込むと同時に、隣接するリビングとダイニングキッチンにL字型の大開口部を通して緩やかな一体感をもたらし、より広がりのある空間を演出。家の内と外を曖昧に繋ぐ半屋外のセカンドリビングとしての活用も可能にしている。リビング北側の吹き抜け階段に隣接する裏庭も、「窪み」として頭上からの光を採り込むだけでなく、上方向への広がりを感じさせてくれる空間であり、D邸では他にも坪庭をはじめ、場所に合わせた大小の「窪み」を取り入れている。こうした不整形な建物にすることで、「窪み」が家の内と外を繋ぐ緩衝材のような役割を果たし、当初からの最大の課題であったプライバシーと明るさや開放感といった相反する課題を解決。その結果、そんな難題があったことを感じさせない、住まい手が望んでいた理想の暮らしが実現したのである。

 

 

Post:2023.10.17