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住まいづくりcolumn

ダイナミックな造形の 蛇籠(じゃかご)の家

 

西垂れの傾斜地に建つガレージ付きのコートハウス。重力に逆らうように宙に跳ね出しているコンクリートのボリュームが目にとまるダイナミックな造形が圧巻だ。設計した六鹿(むつが)さんは、人工的に切り開かれた造成地に擁壁を拵えて平坦な土地を作るのではなく、以前そこにあった里山の風景を雑木の庭によって再生しつつ、人の手の痕跡をそこに強く印象づける様なファサードをイメージした。 また、砕石をステンレス製のカゴの中に詰めた「蛇籠(じゃかご)」の壁が特徴的だ。本来は土木用の資材としてつくられた蛇籠は道路からの目線を遮る強固な壁であるが、一方で風や雨などが通り抜ける自然との親和性が高い材料ともいえる。

 

L字型の空間の両端にリビングとキッチンを配置し、その交点は薪ストーブを据えたダイニングスペースとした。また米杉張りの天井や漆喰塗りの壁、鉄製の格子が入った間仕切り戸など、施主とともに長い時間を掛けて吟味した素材や意匠が空間を彩っている。 キッチンでまず目に飛び込んでくるのはシンクの先にある窓越しの樹木の姿。勝手口やパントリーの配置など機能的な条件と同時にプランニングを成立させるのに一苦労したポイントである。お陰で風にそよぐ木立を眺めながらキッチンに向かうことができる気持ちの良い空間が完成した。
 洗面所と浴室も幾度も打合せと変更を重ねて完成した。中庭と屋内との繋がり方、使用する設備機器や素材など、細部に至るまで施主夫妻のこだわりと美意識が反映されている。
 基本計画の開始からとても長い時間を掛け、打合せや変更を経て竣工した蛇籠の家。この家造りに関わったすべての人の情熱と根気に支えられながら、心から誇れる一軒の住宅が完成したと六鹿さんは実感をこめられた。

Post:2025.04.04